不妊症の相談

目次

不妊症

不妊症の相談は初めにお願いしていることがあります

①産婦人科で一通り検査を受けてください

②漢方治療の期間は長くて半年とします

若い方で月経の大きな乱れがない方を除き、不妊症の相談にいらっしゃる方には一度産婦人科の受診を推奨しています。妊娠すればいずれお世話になるところですし妊娠できない原因を発見してくださることもあるかもしれません。またダラダラ長く治療を続けると精神的に追い詰められるため私のところでご相談を受けるのは半年までと決めています。私はそれまでに皆さんのお身体を整えるお手伝いをしています。

『不妊症』と括ると特別な感じがするかもしれませんが全く悩まずに妊娠出産されるご夫婦もおられますよね。その方々と何が違うのか?というと初潮から月経が問題なく来ているかどうかです。

*男性不妊に関しては補中益気湯の精子運動率upや補腎薬を用いた治療を実施しているところもありますが私のところでは受け付けておりません。なぜなら漢方で(体感的に)判断できるものではないからです

女性ホルモンの流れ

女性ホルモンの流れはご覧の通りですフィードバック機構というシステムによって「視床下部→下垂体→卵巣→視床下部・・・」 ホルモン分泌をコントロールしています。不妊症の相談を受ける際にはこの図を用いて漢方で何ができるのかをご説明しています。

卵巣は子宮の状態を見ている

鶏が先か卵が先か問題の様にサイクルなのでどこから見るのが良いか?がありますが、私は卵巣がどこを見ているかに着目しています。卵巣は子宮の状態をみて「内膜に弾力と厚みがあり良い状態だから分泌を高めよう」「古い血で覆われていて状態が良くないから分泌を控えよう」とフィードバックをコントロールしているとお伝えしています。

漢方に出来ることは特別なことではありません。ご自身が持っている以上のことはできません。不妊に限らずカラダが持っている力を最大限に発揮することが漢方の役割です。つまり漢方が出来ることは「子宮の状態を調えること=月経を整えること」に尽きると思っています。

毎月の月経の様子を子細に伺います。

周期・出血期間・月経痛(痛みの部位、時期、程度)・経血の量、色、質、塊

おりもの 質・色・量

月経前後の体調変化…頭痛、めまい、乳房の張り痛み、食欲↑↓、便通、イライラ・落ち込み

初潮、月経が止まっていた期間、ピル服用経験・年数

そして産婦人科での治療の様子を伺い総合的に判断します。

月経は3カ月あれば整う

月経を整えること自体は難しいことではありません。3サイクル頂ければ大抵整います。あとはプラス3サイクルで妊娠できるかどうかだと思っています。『3+3』初めに半年間と言ったのはこの期間のことなのです。それでも年齢やご自身のエネルギー(卵子の数や質)次第で残念ながら上手くいかないことはあります。

しかし産婦人科で行う不妊治療と違い漢方治療は「ご自身の体調は必ず良くなっている」ことです。産婦人科へ2年通い人工授精を数回→体外受精を10数回受けたあと月経量が激減してもう閉経してしまうのではないか?と思うほどに少なくなってしまったと仰る方もいます。不妊治療においてホルモン治療が悪者だとは思いません。必要な手段ですし自然妊娠が叶わない方には人工・体外受精を推奨しています。ただしそれを続けることで「元々少ないエネルギーを絞り出すように消耗してしまう」ことが結果として月経量の減少や場合によっては早期閉経を招くのでしょう。

漢方はそのようなことがありません。カラダが持っている力を最大限に発揮することが漢方の役割であり、それ以上のことはできません。無理させず自然な状態で月経を整えご自身のお身体と向き合ってもらいたいとおもいます。

漢方薬

扱う漢方薬は実際そんなに多くありません。

当帰芍薬散、逍遙散(加味逍遥散は不妊には使いません)、温経湯、桂枝茯苓丸、折衝飲、芎帰調血飲第一加減

だいたいこれらの処方をベースとし状況をみて処方を組み替えます。そして処方選択の際に意識していることは3つ。

①活血が必要か?

②陰血の量と質はどうか?

③温陽(あたためる)は必要か?

月経の状況を伺いながら3つの情報を集めて処方を組みます。そして服薬後の月経をみて改善しているところ・してないところを確認し修正をしながら進めていきます。都合3サイクルが月経を整える目安になります。

子宮筋腫その他疾患

不妊症で漢方相談に来られる方の多くは何かしらの疾患を抱えています。初産の年齢が上がり、出産回数も減っているため卵巣・子宮が休まる期間が短いことが要因ではないかと考えられています。

子宮内膜症(卵巣嚢腫)・子宮筋腫・腺筋症・多嚢胞性卵巣・子宮頸癌・卵管捻転

漢方薬の服用によりこれらの疾患が治癒ないし改善に向かうことはあります。半年以上かかりますがチョコレート嚢腫が消失した例も何例か経験しています。癌化するリスクがありますから持っていない方が良いですね。多嚢胞の方は漢方でいう痰飲体質の方が多いため処方を組む際に考慮します。しかし子宮筋腫に関しては消えたことはありません。エストロゲンが分泌されている間はどうやっても増大していくので難しいと感じています。ただし、漢方薬を飲んでいれば月経痛・過多月経・血塊などなど月経中や前後の不調は整います。「硬く筋腫に触れていたのが柔らかくお餅のようにペコンと凹むようになった」と仰った方もおりました。腺筋症の方も漢方薬で痛みや出血量を整え楽に過ごすことは可能です。


以上のように

「不妊症の治療=月経を整える」ことであることはご理解いただけたとおもいます。月経が整い→子宮の状態が整えば→フィードバック機構はスムーズに進み→視床下部・下垂体ホルモンは自然と分泌され→良質な卵が育つようになる→弾力と厚みのある子宮内膜に迎えられれば着床することができます。産婦人科で不妊治療を受けているけれどなかなか授からずに悩んでいる方、漢方でカラダを整えてみるのも良いとおもいます。

目次