高麗人参と島根県大根島

高麗人参(こうらいにんじん)と聞くと

高い 貴重 効きそう 元気になる 滋養強壮 長生き・・・

といったイメージが浮かぶでしょうか?

人参(キャロットではない)は中国で古くから使われている薬草の1つです

一般には上記のようなイメージで単品で使われるもののように思われがちですが

漢方薬では他の薬草と組合せた処方の一部となります *独参湯という人参1味の処方も存在する

さて今回は「人参が何故にこんなに貴重なのか」を現地レポートとともに載せたいとおもいます


4月末に島根県松江に行ってきました

目的は学生時代の友人に会うことで山陰地方は初訪問でした

良い機会のため植物について調べてみると島根県の中海に「大根島」というところがあり

高麗人参の産地であることを知りました *由志園で牡丹も買ってきましたから後日書きますね

人参には

人参 高麗人参 紅参 白参 御種人参

などの呼び名があり加工方法や時代・地域によって違いがあります

また高価な人参の代用として用いられた党参(トウジン)や目的を異にした竹節人参(チクセツニンジン)もあります

高麗人参

こうらいにんじん

と名が付くことでブランド価値を高める印象があります

高麗とはもちろん朝鮮半島に存在したかつての国名です

8世紀に誕生した国であり、同時期は中国は北宋時代、日本は平安時代にあたります

人参は古代中国の医学創成期から用いられていましたがより良い品質のものを求めて産地による違いが生まれるようになっていったのです

神農本草経

味甘微寒 主補五臓 安精神 定魂魄 止驚悸 除邪氣 明目開心益智 久服軽身延年 一名人銜一名鬼葢

傷寒論

服桂枝湯、大汗出後、大煩、渇不解、脈洪大者、白虎加人参湯主之

発汗後、身疼痛、脈沈遅者、桂枝加芍薬生姜各一両人参三両新加湯主之

発汗後、腹脹滿者、厚朴生姜甘草半夏人参湯主之

その他、小柴胡湯・半夏瀉心湯・理中湯・四逆加人参湯など

中国伝統医学と一括りにしても時代や用いた人の考え方には違いがあります

神農本草経と傷寒論の人参と比較した場合においても使用目標に明確な違いがあります

人参の効能「大補元気」を比較検討した際に朝鮮半島の土壌で採れた人参が優位だったということでブランド価値を付けるように高麗人参と呼ばれるようになりました


雲州人参(うんしゅうにんじん)

今回大根島に行き初めて目にした呼び名でした

漢方で雲州といえば中国の山西省にかつて存在した地名を指します

しかしここでは日本の雲州つまり出雲国(令制国)や松江藩(江戸時代)のことを指して呼び名がついたようです

日本国内で人参の生産を続けている会津・信州と分けて認知されるため雲州と呼ばれているようです

御種人参

「おたねにんじん・おんたね」

人参が貴重であったのは昔も今も変わりありません

日本の医術は山伏が山野を駆け回り野草を用いていたものや巫女による祈祷といった体系的ではないものを除くと中国からの輸入に頼ってきました

中国では神農本草経や傷寒論の時代には薬草の効能をすでに理解し系統立てて利用していました

そして遣唐使の時代に持ち込んで日本には中国由来の医術が広がっていきました

天然物は当然有限資源です

取れ高の少ないものは高価になります

江戸時代・八代将軍吉宗は生薬を買い続けて財政難に陥ってしまわぬよう

人参の種を持ち込んで自国栽培を試みます

種と苗を入手させそれを各藩に配って栽培させる

幕府から頂いた人参であるから「御種・お種・おんたね」と呼び名がつきました

栽培が認められた3つの地域が会津・信州そして雲州でした

高価な理由

人参が高価なのは効能が特異であることがあげられます

ヒトは飲食物から得られたエネルギーを素にカラダを維持します

点滴の存在しない時代には胃がとても重要な役割を果たすことは想像に難くありません

人参は胃の津液(≒胃粘膜)を正常に保ち胃の機能を維持することができるのです

高価な理由は他にもあります

それは栽培のための土壌づくりに手間がかかることが大きいのです

六年根(ろくねんこん):6年かけて根を太く大きく育てたもの

効能が最大限に発揮されるのは六年根といわれています

つまり一株育てるのに6年間は掘り返すことができません

さらに人参にはサポニンという成分が含まれています

これが土に浸透してしまい六年根を掘り起こしてから最低でも9年間は同じ場所で作付けが出来ないのです…

6+9=15

*子供が生まれてから中学を卒業するまで

*犬猫の一生くらい

毎年採るためには広大な土地を15分割し順々に育てなければならないという非効率な手間を要します

これでは値段が高くもなりますよね

(大根島では15年と仰っていましたが6+6=12年というところもあるそうです)


大根島で撮影した雲州人参畑の写真を載せておきます

人参は陽と雨があたり過ぎないように藁の屋根の下で育てられます

*近年ソーラーパネルの下で高麗人参を栽培しているところがあるそうですが確かに景観が似ています

GW頃にはまだ実は付いていませんでした

6-7月頃には赤い実をつけます

白参:そのまま天日干ししたもの

紅参:蒸して乾燥させたものはオレンジ色に変化します

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