葦茎四順湯
とある方からの問い合わせ
「イケイトウという漢方薬はあるのでしょうか?他のところで聞いたらそんなものは存在しません。」と言われたそう
その先生は知っていて無いと言ったのか存在をご存じなかったのか?
真相は定かではありませんがイケイトウ(葦茎湯)という漢方薬はあります
金匱要略・肺痿肺癰咳嗽上気
≪千金≫葦茎湯
咳に微かに熱あり、煩満し胸中甲錯するを治す。これ肺癰なり。
勿誤薬室方函口訣
此方は平淡にして思の外効あるもの也
微熱と胃中甲錯とを目的とすべし
胸に甲錯あるは蓄血あるが故なり
蓄血なくとも咳血のあるに宜し
若し咳嗽甚だしきものは四順湯を合して効あり
福井楓亭は肺癰に先ず準縄の瀉白散を用い効なきときは此方を用と云う
葦茎湯は出典(金匱要略)の通り肺癰に用いる漢方薬です
肺癰:肺に癰腫を生じて膿血を咳吐する病症
初発は外感熱病つまりカゼによるものが多く
素体虚弱なものや適切に処置をしなかったものが慢性経過した呼吸器疾患である
膿を伴う痰が主症状であるから黄色・粘稠(時に緑色の痰)であり喀出しづらい
また膿が長期化して血痰が混じる場合もある
陰虚傾向の者(潤い不足)は粘膜を正常に保つことが難しいため痰が生じやすく粘性を帯びやすい
とくに呼吸器の粘膜は適度な潤いが必要な器官(→これの乾燥が急激に起こったものが間質性肺炎)
高齢者は若いころと比較してカラダがやつれていく(物質的なエネルギーが減少していく)
陰とは物質エネルギーである躯体そのものでもある
つまり陰虚傾向である
熱は陰を消耗しやすいため熱性感染症は陰虚傾向のものが罹ると容易に進行する
肺炎・新型コロナウィルス感染症重症化・肺MAC症
肺は華蓋であり呼吸器疾患は安易に発症し時に命を奪うほどに急速に進行する
肺癰のものは陰虚の治療と同時に膿痰の排出をしてリスク回避をしておく必要がある
葦茎湯(葦茎四順湯)はそのための処方である
葦茎四順湯
葦茎・薏苡仁・瓜子・桃仁・貝母・桔梗・紫苑・甘草
肺癰湯
原南陽(1753-1820)が創成した葦茎湯と類似の処方も参考に…
杏仁・貝母・桔梗・黄芩・括呂根・白芥子・甘草
こちらは葦茎ではなく黄芩を配し膿毒を去る、喀痰に白芥子を用いている点が特徴
冬瓜子・桃仁・薏苡仁の鬱血を去る薬草がない